ガンダム歴代主題歌を音楽ジャンルから紐解く #01 機動戦士ガンダムcolmun

昭和アニソンから歌謡ロックへ。初代ガンダムを彩った音楽の変遷

1979年に放送が開始された『機動戦士ガンダム』
リアルロボットアニメの金字塔として、今なお多くのファンやモデラーを魅了し続けています。

ガンダムシリーズの魅力は、ストーリーやモビルスーツのデザインだけではありません。
作品を彩る「音楽」もまた、ガンダムという文化を形作ってきた重要な要素です。

本シリーズでは、ガンダム歴代作品の主題歌を取り上げ、それぞれの楽曲が持つ音楽的な特徴や、制作された時代の音楽シーンとの関係を紐解いていきます。

第1回は、すべての原点である『機動戦士ガンダム』。

テレビシリーズから劇場版三部作まで、初代ガンダムを彩った楽曲を振り返りながら、その音楽性を見ていきます。

1979年という時代

『機動戦士ガンダム』が放送された1979年は、日本の音楽シーンにとっても大きな変化の時期でした。

歌謡曲が依然として大きな存在感を持つ一方で、フォークやニューミュージック、ロック、ディスコなど、海外の音楽的な影響を取り込んださまざまな音楽が広がっていました。

テレビアニメの主題歌も、もちろんその時代の音楽文化から無縁ではありません。

当時のロボットアニメでは、作品や主人公の名前を繰り返し歌う、分かりやすく力強い主題歌が多く使われていました。

『機動戦士ガンダム』の音楽も、そのスタイルを受け継いでいます。

しかし、作品がテレビシリーズから劇場版へと展開していくにつれて、その音楽表現も少しずつ変化していきました。

「翔べ!ガンダム」──王道アニメソングの中にあるポップス

テレビシリーズのオープニングテーマが「翔べ!ガンダム」です。

作詞は井荻麟、作曲は渡辺岳夫、編曲は松山祐士、歌唱は池田鴻。
現在でも「ガンダムの歌」と聞いて、多くの人が最初に思い浮かべる楽曲のひとつでしょう。
音楽的には、当時のロボットアニメ主題歌らしい、
アニメソング / ポップス / ブラスを活かしたヒーローソング
という要素を持っています。

力強いブラス、明快なメロディ、覚えやすいサビ。

作品名である「ガンダム」を前面に押し出した歌詞も含め、非常に分かりやすい構成になっています。

一方で、単純な「子供向けのテーマソング」として片付けることもできません。

当時の日本のポップスや歌謡曲では、ソウル、ファンク、ディスコなど海外の音楽から影響を受けたリズムやアレンジが広がっていました。

「翔べ!ガンダム」にも、そうした時代のポップスに通じるリズム感や、華やかなブラスアレンジを感じ取ることができます。

つまりこの曲は、
従来型のロボットアニメ主題歌を受け継ぎながら、1970年代末のポップス感覚も取り込んだ楽曲として聴くことができます。

「永遠にアムロ」──主人公の物語を歌うエンディング

エンディングテーマの「永遠にアムロ」は、「翔べ!ガンダム」とは異なる方向性を持っています。

オープニングがガンダムという存在や作品そのものを象徴する楽曲だとすれば、「永遠にアムロ」は主人公アムロに焦点を当てた、より落ち着いた楽曲です。

ジャンルとしては、

ポップス / バラード / アニメソング

といった要素から捉えることができます。

ここで注目したいのは、オープニングとエンディングで音楽の役割が明確に分けられていることです。

「翔べ!ガンダム」が視聴者を作品世界へ引き込む入口だとすれば、「永遠にアムロ」は物語を見終えた後に余韻を残す出口。

この対照的な2曲によって、テレビシリーズの音楽的な世界観が作られています。

劇場版で変化するガンダムの音楽

テレビシリーズ終了後、ガンダムは劇場版三部作へと展開します。

ここで音楽の存在感はさらに大きくなります。
特に印象的なのが、劇場版のために制作された主題歌です。
テレビシリーズの主題歌が「ロボットアニメ」というジャンルの中に位置づけられる一方、劇場版ではより一般的なポップスやロックの表現を取り込んだ楽曲が登場します。

その代表が「哀 戦士」です。

「哀 戦士」──ガンダムとロックの接近

劇場版『機動戦士ガンダムII 哀・戦士編』の主題歌「哀 戦士」。

歌唱は井上大輔。

この楽曲は、初代ガンダムを代表する音楽のひとつとして現在まで高い知名度を持っています。

「翔べ!ガンダム」と比べると、その音楽性は明らかに大人びています。

ジャンルとして捉えるなら、

歌謡ロック / ポップロック / ニューミュージック

といった要素が近いでしょう。

力強いリズムとギターを中心としたサウンドに、どこか哀愁を感じさせるメロディ。

タイトルが示す通り、戦争という作品のテーマとも強く結びついています。

ここで重要なのは、ガンダムが単純な「ロボットヒーローの物語」ではなく、戦争の中で生きる人々を描いた作品として受け取られるようになっていたことです。

「哀 戦士」は、その変化した作品イメージを音楽面からも象徴する楽曲だったと言えるでしょう。

「風にひとりで」──戦場から離れた静かな視点

『機動戦士ガンダムII 哀・戦士編』では、「哀 戦士」とともに「風にひとりで」も印象的な楽曲として登場します。

「哀 戦士」が力強いロック的なサウンドを持つのに対して、「風にひとりで」はより静かで内省的です。

ジャンルとしては、

バラード / ポップス / ニューミュージック的な楽曲

として捉えることができます。

戦闘やモビルスーツの迫力を前面に出すのではなく、その戦争の中で生きる人間の感情に寄り添う。

この対比によって、劇場版の音楽は一つのジャンルに固定されることなく、作品のさまざまな感情を表現しています。

「めぐりあい」──映画音楽としてのガンダム

劇場版三部作の最後を飾る『機動戦士ガンダムIII めぐりあい宇宙編』。
その主題歌が「めぐりあい」です。
「哀 戦士」と同じく井上大輔が歌唱を担当しています。

音楽的には、

ポップロック / バラード / シンフォニックな映画主題歌

といった要素から捉えることができます。

壮大なストリングスやシンセサイザーを含むアレンジによって、テレビシリーズの主題歌とは異なる、映画作品らしいスケール感が生まれています。

「めぐりあい」というタイトルそのものも、初代ガンダムの物語を象徴するものです。

戦争の中で出会った人々。
別れていく人々。
そして、ニュータイプというテーマ。
それらを一つの楽曲に集約することで、劇場版のラストを印象的に締めくくっています。

初代ガンダムの主題歌をジャンルで整理する

ここまでの代表的な楽曲を、音楽的な特徴から大まかに整理すると以下のようになります。

楽曲主な音楽的要素
翔べ!ガンダムアニメソング / ポップス / ブラスサウンド
永遠にアムロポップス / バラード
哀 戦士歌謡ロック / ポップロック / ニューミュージック
風にひとりでバラード / ポップス
めぐりあいポップロック / バラード / シンフォニックサウンド

もちろん、これらは厳密な音楽学上のジャンル分類ではありません。

1970年代末から1980年代初頭の日本のポップスは、歌謡曲、ニューミュージック、ロックなどの境界が現在ほど明確ではなく、複数の音楽的要素が混ざり合っていました。

だからこそ、初代ガンダムの楽曲も一つのジャンルだけでは説明しきれない魅力を持っています。

初代ガンダムの音楽が残したもの

初代『機動戦士ガンダム』の音楽を振り返ると、一つの変化が見えてきます。

テレビシリーズでは、従来のロボットアニメ主題歌らしい分かりやすさを持ちながら、当時のポップスらしいサウンドを取り入れていました。

そして劇場版では、ロックやバラード、映画音楽的なアレンジを取り込み、作品そのものが持つ「戦争」「人間」「出会いと別れ」というテーマをより強く音楽に反映しています。

つまり初代ガンダムの音楽は、

「ロボットアニメの主題歌」から「作品の世界観を表現する音楽」へ

と、その役割を広げていったと見ることができます。
そして、この流れは後のガンダムシリーズにも受け継がれていきます。

次回予告|機動戦士Ζガンダム

1985年。

初代ガンダムから6年後、『機動戦士Ζガンダム』が放送されます。

時代は1980年代へ。
日本の音楽シーンでは、ニューミュージックが大きく発展し、ポップスやロックのサウンドもさらに多様化していきます。
そんな時代に登場したΖガンダムの主題歌は、初代ガンダムからどのように変化したのでしょうか。

次回は『機動戦士Ζガンダム』の主題歌を取り上げ、80年代の音楽シーンとの関係から紐解いていきます。

罪プラの逆襲、開幕