ガンダム歴代主題歌を音楽ジャンルから紐解く #02 機動戦士Ζガンダムcolmun

80年代ポップスと洋楽の融合。Ζガンダムを彩った音楽の進化

1985年。

初代『機動戦士ガンダム』の放送から6年後、『機動戦士Ζガンダム』が始まりました。

一年戦争を描いた初代から舞台を宇宙世紀0087へ移し、より複雑な人間関係と政治、そしてニュータイプというテーマを描いたΖガンダム。
作品そのものが大きく変化したように、音楽もまた初代とは明確に違う方向へ進んでいきます。

80年代に入り、日本の音楽シーンではニューミュージックが定着し、ポップスやロック、シンセサイザーを取り入れたサウンドが広がっていました。
そんな時代に登場したΖガンダムの主題歌には、当時の日本のポップスだけではなく、海外の音楽からの影響も色濃く感じられます。

特に注目したいのが、作曲家として参加したニール・セダカの存在です。

初代ガンダムが「昭和アニメソングの王道」から歌謡ロックへ広がっていったのに対し、Ζガンダムではさらに一歩進んで、

80年代ポップス × 洋楽 × アニメソング

という新しい組み合わせが生まれていきました。

1985年の音楽シーン

1985年の日本は、音楽のスタイルが大きく変化していた時代です。

ニューミュージックはすでに大きなジャンルとして定着し、シンセサイザーや電子楽器を取り入れたポップスも一般的になっていました。
海外では、ポップス、ロック、ニューウェーブ、シンセポップなどが盛り上がり、日本の音楽にもその影響が入り込んでいます。
現在では当たり前になった「打ち込み」を使ったサウンドも、80年代を象徴する要素のひとつです。

Ζガンダムの音楽を聴いていると、初代ガンダムとの違いがこの時代背景からも見えてきます。
初代の音楽が持っていたブラスや歌謡曲的な力強さに対して、Ζではより洗練されたポップスの響きが前面に出てきます。

「Ζ・刻をこえて」──ガンダムに洋楽ポップスがやってきた

Ζガンダム前期オープニングテーマが「Ζ・刻をこえて」。

歌うのは鮎川麻弥。
そして、この曲を語るうえで欠かせないのが、作曲を担当したニール・セダカです。
「Ζ・刻をこえて」は、ニール・セダカの楽曲「Better Days Are Coming」をベースに、日本語詞を井荻麟が担当した楽曲として知られています。鮎川麻弥の公式ディスコグラフィーでも、同曲について「作詞・作曲:Neil Sedaka/訳詞:井荻麟」とされています。(NE.JP)

ここが初代ガンダムとの大きな違いです。

初代では、日本のアニメソングや歌謡曲、ニューミュージックなどの流れの中で楽曲が作られていました。
それに対してΖでは、海外ポップスの楽曲そのものをガンダムの主題歌として取り込むというアプローチが行われています。

音楽的には、

80年代ポップス / シンセポップ / ポップロック

といった要素から捉えることができます。

特に印象的なのが、電子的なサウンドとリズム。
初代ガンダムの「翔べ!ガンダム」と聴き比べると、わずか6年の違いとは思えないほど、時代の空気が変わっています。

ガンダムの音楽もまた、80年代へ突入したのです。

「星空のBelieve」──ポップスとしてのガンダム

エンディングテーマ「星空のBelieve」も、鮎川麻弥が歌っています。
作詞は竜真知子、作曲はニール・セダカ、編曲は渡辺博也。
この曲もニール・セダカの楽曲をルーツに持つ作品で、英語版では「Bad And Beautiful」というタイトルも確認できます。(NE.JP)

「Ζ・刻をこえて」と同じく、海外ポップスの感覚を持ちながら、日本語の歌詞と80年代らしいアレンジによって日本のアニメソングとして成立しています。

ジャンルとしては、

80年代ポップス / AOR的なポップス / バラード

という方向から捉えることができます。

そして、この曲が面白いのは、戦闘やモビルスーツを直接的に歌っていないことです。
初代の「翔べ!ガンダム」のように、タイトルやロボットの名前を前面に出すのではなく、より人間の感情に寄り添った歌になっています。
これはΖガンダムという作品そのものの変化とも重なります。

「水の星へ愛をこめて」──80年代ポップスの完成形

そして、Ζガンダムを代表するもう一つの楽曲が「水の星へ愛をこめて」です。

歌うのは森口博子。

1985年にこの曲でデビューした森口博子にとっても、非常に重要な楽曲となりました。森口博子の公式サイトでも、1985年8月7日のシングルとして「水の星へ愛をこめて」が掲載されています。作詞は売野雅勇、作曲はニール・セダカ、編曲は馬飼野康二です。(森口博子オフィシャルサイト/clubM「森口博子オフィシャルファンクラブ」)

こちらもニール・セダカによるメロディを軸に、日本語詞と日本のポップスらしいアレンジが組み合わされています。(歌ネット)

ジャンルとしては、

80年代ポップス / バラード / シンフォニック・ポップ

といった要素から捉えることができます。

「Ζ・刻をこえて」が疾走感のある80年代ポップスだとすれば、「水の星へ愛をこめて」はより叙情的。

宇宙、水、生命、愛。

歌詞の持つイメージも含めて、Ζガンダムという作品の持つ幻想的な側面を強く感じさせます。
そして何より、森口博子の伸びやかなボーカルが楽曲のスケール感を大きくしています。
後年になっても歌い継がれ、現在もガンダムソングを代表する一曲として知られているのは、この楽曲が単なるアニメ主題歌を超えたポップスとして成立しているからなのかもしれません。

「銀色ドレス」──作品世界に溶け込む80年代サウンド

主題歌だけでなく、Ζガンダムの音楽を語るなら「銀色ドレス」も外せません。

森口博子が歌うこの曲は、劇中で使用された挿入歌。

作詞は井荻麟、作曲・編曲は馬飼野康二です。森口博子の公式ディスコグラフィーでも、1985年発売のシングル「水の星へ愛をこめて」のカップリングとして掲載されています。(森口博子オフィシャルサイト/clubM「森口博子オフィシャルファンクラブ」)

ジャンルとしては、

80年代ポップス / バラード / シンフォニック・ポップ

といった方向性を感じさせます。

「水の星へ愛をこめて」と同じく、激しい戦闘を盛り上げるための曲というよりも、登場人物の感情や物語の余韻を強調する役割を担っています。
ここにも、Ζガンダムの音楽が単なる「ロボットアニメのBGM」ではなく、ドラマそのものを支える音楽として作られていることが表れています。

Ζガンダムの音楽をジャンルで整理する

代表的な楽曲を大まかな音楽的特徴から整理すると、次のようになります。

楽曲主な音楽的要素
Ζ・刻をこえて鮎川麻弥80年代ポップス / シンセポップ / ポップロック
星空のBelieve鮎川麻弥80年代ポップス / AOR的ポップス / バラード
水の星へ愛をこめて森口博子80年代ポップス / バラード / シンフォニック・ポップ
銀色ドレス森口博子80年代ポップス / バラード / シンフォニック・ポップ

これらを聴き比べてみると、初代ガンダムとの違いがかなりはっきりします。

初代が、アニメソング → 歌謡曲 → ロック

という広がりを見せていたのに対して、Ζでは、ポップス → 洋楽 → シンセサウンド → 80年代的な洗練へと音楽の世界が広がっています。

なぜΖガンダムの主題歌は「80年代らしい」のか

Ζガンダムの音楽を聴いていると、作品そのものより先に「80年代」という時代を感じる人もいるかもしれません。

それは、シンセサイザーや電子楽器を取り入れたサウンドだけが理由ではありません。

メロディの作り方。
リズム。
ボーカルの処理。

そして海外ポップスを日本語のポップスとして再構築する感覚。
これらが重なって、Ζガンダム独特の音楽的な時代感を作っています。

特に興味深いのが、ニール・セダカという海外のポップス作家の楽曲をガンダムの主題歌に取り入れたことです。
これは単なる「洋楽風アレンジ」ではありません。
海外ポップスのメロディを、日本語の歌詞と日本のアレンジによってアニメソングへ変換する。

Ζガンダムの主題歌には、1980年代の日本のポップスが持っていた、こうした国際的な音楽文化の受容も感じ取ることができます。

初代ガンダムからΖへ。6年間で何が変わったのか

ここで第1回の初代ガンダムと比較してみましょう。

機動戦士ガンダム

1979–1982

アニメソング

ポップス

歌謡ロック

映画音楽的な表現

機動戦士Ζガンダム

1985–1986

80年代ポップス

洋楽ポップス

シンセサウンド

シンフォニック・ポップ

もちろん、これは厳密な音楽ジャンルの分類ではありません。

しかし、こうして並べてみると、ガンダムの主題歌がその時代の音楽文化を取り込みながら変化していることが見えてきます。

初代ガンダムが1970年代末の音楽から1980年代初頭へ向かう過渡期を映していたとすれば、Ζガンダムはまさに80年代のポップスそのものを取り込んだ作品と言えるでしょう。

ガンダムは「時代の音」を取り込んでいく

初代からΖへ。
わずか6年。

しかし、その間に日本の音楽は大きく変化しました。
そしてガンダムもまた変化しました。

モビルスーツのデザインだけではありません。
作品を彩る音楽も、その時代の空気を取り込みながら進化しています。

だからこそ、ガンダムの主題歌を年代順に聴いていくと、単なるアニメソングの歴史ではなく、1970年代から現在までの日本のポップミュージックの変化

まで見えてくるのです。

次回予告|機動戦士ガンダムΖΖ

1986年。

Ζガンダムの放送終了から、ほとんど間を置かずに始まった『機動戦士ガンダムΖΖ』。
そこで登場した主題歌は、Ζガンダムとはまた違った方向へ進みます。
その象徴とも言えるのが、あまりにも有名なタイトル、

「アニメじゃない ~夢を忘れた古い地球人よ~」です。

80年代ポップスの勢いがさらに加速する中、ガンダムの音楽はどこへ向かうのか。

次回は『機動戦士ガンダムΖΖ』を取り上げます。

罪プラの逆襲、開幕