ガンダム歴代主題歌を音楽ジャンルから紐解く #03 機動戦士ガンダムΖΖcolmun

「アニメじゃない!」と言い切った80年代。ガンダムとポップスの距離が最も近づいた時代
1986年。
『機動戦士Ζガンダム』の放送終了から間もなく、『機動戦士ガンダムΖΖ』が始まりました。
一年戦争を描いた初代、そしてシリアスな政治劇へと進んだΖ。
その続編として登場したΖΖは、物語のトーンも、キャラクターも、そして音楽も大きく変化しています。
その変化を最も象徴しているのが、あまりにも有名なこのタイトルです。
「アニメじゃない ~夢を忘れた古い地球人よ~」
「アニメじゃない」と歌いながら、当然ながらアニメ作品の主題歌。
一見すると冗談のようにも聞こえるこのタイトルですが、実際に曲を聴いてみると、そこには1980年代の日本のポップスが持っていた華やかさと勢いが詰め込まれています。
今回は『機動戦士ガンダムΖΖ』の主題歌を中心に、80年代J-Popとガンダムが交差した時代を紐解いていきます。
1986年。80年代ポップスが最も華やかだった頃
1986年の日本では、ニューミュージックから発展したポップスがさらに大きな広がりを見せていました。
シンセサイザーや電子楽器を使ったアレンジが一般的になり、ポップス、ロック、歌謡曲の境界も次第に曖昧になっていきます。
いわゆる「80年代らしい音」。
きらびやかなシンセサウンド。
厚みのあるコーラス。
タイトなドラム。
そして、耳に残る大きなサビ。
ΖΖの主題歌は、まさにこの時代の空気の中から生まれました。
初代ガンダムが「アニメソング」の形式から出発し、Ζで海外ポップスや80年代的なサウンドを取り込んだ。
そしてΖΖでは、その流れがさらにポップな方向へ進んでいきます。
「アニメじゃない」──タイトルからして80年代
前期オープニングテーマは、
「アニメじゃない ~夢を忘れた古い地球人よ~」
歌うのは新井正人。
作詞は秋元康、作曲は芹澤廣明、編曲は鷺巣詩郎。
このクレジットだけを見ても、当時の日本のポップスシーンとの距離の近さを感じることができます。
音楽的には、
80年代J-Pop / ポップロック / 歌謡ポップス
といった要素を持った楽曲です。
そして何より特徴的なのが、イントロから一気に展開していく華やかなサウンド。
シンセサイザー、ギター、ドラム、コーラスなどが重なり、非常に「80年代らしい」音像を作っています。
初代の「翔べ!ガンダム」と聴き比べると、その違いはかなり明確です。
「翔べ!ガンダム」が作品名や主人公を前面に出した、分かりやすいヒーローソングだったのに対して、「アニメじゃない」は、一曲のポップソングとして成立することを強く意識したような構成になっています。
「夢を忘れた古い地球人よ」という言葉
この曲でもう一つ面白いのが、歌詞です。
「アニメじゃない」というタイトルだけではなく、
「夢を忘れた古い地球人よ」
という言葉まで登場します。
これはΖΖという作品のテーマとも無関係ではありません。
Ζガンダムが、政治や戦争、人間の業を正面から描いた作品だったのに対し、ΖΖは序盤からより明るくコミカルな方向へ振れています。
そこに「夢」という言葉を持ってくる。
ガンダムという作品を知っている人ほど、少し意外に感じるかもしれません。
しかし、80年代のポップスという視点から見ると、これはそれほど特殊な表現ではありません。
夢。
未来。
愛。
青春。
希望。
こうした言葉は、当時のポップスにおいて非常に重要なテーマでした。
「アニメじゃない」は、そうした80年代ポップスの価値観を、ガンダムの世界へ大胆に持ち込んだ楽曲とも考えられます。
「サイレント・ヴォイス」──ΖΖの音楽が変わる
そして後期オープニングテーマが、
「サイレント・ヴォイス」
です。
歌うのはひろえ純。
前期の「アニメじゃない」と比較すると、こちらはかなり雰囲気が変わります。
明るくポップな前期に対して、「サイレント・ヴォイス」はよりドラマチック。
ジャンルとしては、
80年代J-Pop / ポップロック / バラード / シンフォニック・ポップ
といった方向から捉えることができます。
特に印象的なのが、楽曲全体に漂う哀愁です。
ΖΖという作品自体が後半に向かうにつれてシリアスな方向へ変化していくため、この楽曲の持つドラマ性は非常に印象的です。
「アニメじゃない」が80年代の「明るさ」を象徴しているとすれば、
「サイレント・ヴォイス」は80年代ポップスが持つ切なさや壮大さを象徴しているようにも聴こえます。
「一千万年銀河」──宇宙世紀を包み込むエンディング
後期エンディングテーマが、
「一千万年銀河」
です。
歌唱はひろえ純。
タイトルからして、すでにΖΖらしい壮大さがあります。
音楽的には、
バラード / シンフォニック・ポップ / 80年代ポップス
といった要素を感じさせる楽曲。
前期の「時代を感じさせるポップス」とは異なり、こちらは宇宙世紀という長大な物語そのものを包み込むようなスケール感があります。
「一千万年銀河」という言葉も、個人の物語から宇宙規模の時間へと視点を広げています。
ガンダムのエンディングらしい余韻を持ちながら、80年代らしいポップスとしても成立している。
このバランスが面白いところです。
ΖからΖΖへ。さらにポップになったガンダム
ここで前回のΖガンダムと比較してみましょう。
機動戦士Ζガンダム
1985
80年代ポップス
↓
洋楽ポップス
↓
シンセサウンド
↓
シンフォニック・ポップ
機動戦士ガンダムΖΖ
1986
80年代J-Pop
↓
歌謡ポップス
↓
ポップロック
↓
シンフォニック・ポップ
わずか1年。
それでも、作品の音楽的な印象はかなり違います。
Ζが都会的で洗練された80年代ポップスだとすれば、ΖΖはよりキャッチーで、よりテレビ的。
そして何より、「アニメじゃない」という言葉そのものが、80年代のガンダムの立ち位置を象徴しています。
ガンダムと「J-Pop」の距離が近づいた
初代ガンダムからここまでを振り返ると、音楽の変化がかなり見えてきます。
初代ガンダム
アニメソングを基盤に、歌謡曲やロックへ
↓
Ζガンダム
80年代ポップスと洋楽の融合
↓
ΖΖ
80年代J-Popそのものへ
ガンダムの主題歌は、作品のために作られた「アニメソング」という枠から少しずつ外へ広がっています。
一般のポップスとアニメソングの境界が薄くなっていった。
そして、その流れはこの後さらに加速していきます。
「アニメじゃない」は、実は時代を歌っていた?
改めて考えると、「アニメじゃない」というタイトルは非常に大胆です。
1986年。
まだ「アニメソング」という言葉には、現在とは違ったイメージがありました。
そんな時代に、「アニメなのに『アニメじゃない』と歌う。」
これは単なるキャッチコピーではなく、「これは子供向けアニメの歌ではない」「もっと大きなものを歌っている」という意識の表れだったのかもしれません。
もちろん、これは一つの解釈です。
ただ、当時の日本のポップスが急速に洗練され、アニメ作品と一般の音楽文化の距離も少しずつ近づいていたことを考えると、このタイトルは非常に象徴的です。
初代からΖΖまで。ガンダム音楽の変化
ここまでの3作品を並べてみると、ガンダムの音楽がどのように変化してきたのかが見えてきます。
| 作品 | 年代 | 音楽的な特徴 |
|---|---|---|
| 機動戦士ガンダム | 1979 | アニメソング / ポップス / 歌謡ロック |
| 機動戦士Ζガンダム | 1985 | 80年代ポップス / 洋楽 / シンセサウンド |
| 機動戦士ガンダムΖΖ | 1986 | 80年代J-Pop / ポップロック / 歌謡ポップス |
こうして並べると、
「ガンダムの音楽も、時代と一緒に進化している」
ということがよく分かります。
そして次の作品では、また大きな変化が訪れます。
次回予告|機動戦士ガンダム 逆襲のシャア
1988年。
宇宙世紀を舞台にしたガンダムの物語は、劇場作品『機動戦士ガンダム 逆襲のシャア』へと進みます。
そして、ここでガンダムの音楽は再び大きく変化します。
テーマソングを担当するのは、
TM NETWORK。
その代表曲が、
「BEYOND THE TIME ~メビウスの宇宙を越えて~」
です。
80年代の日本のポップスが成熟していく中で、ガンダムはついにシンセポップやニューウェーブとSF映画的な世界観を融合させることになります。
初代から続いてきた宇宙世紀の物語を、どのような音楽で締めくくったのか。
次回は『機動戦士ガンダム 逆襲のシャア』を取り上げます。

